2010年7月


1日●形が変わるお盆
前後関係を全く思い出せないのだが、気がつくと私の手には漆塗りのお盆が載っていた。形は長方形。自分の足もとがチラリと見えた。どうやらグリーン系の着物を着て、若草色の草履を履いているようだ。そのあと誰かゴージャスなイメージの人に逢った。誰だかわからないが「ゴールド」のイメージ。そのあと再び手もとを見たときには、お盆は円形に変化していた。
【解説】 今夜の夢には何かもっと長いストーリーがあったように思うのだが、なぜか詳細を思い出せない。そういえば夢の中ではお盆の形にばかり気を取られていたが、お盆の上には何も載っていなかった気がする。なんとも不思議な夢だ。



2日●カッパとキツネと観覧車
私はヨーロッパの田舎らしきところを旅している。同行者がいるものの、彼女の顔はよく見えない。高校時代に親しかった「カッパ」というニックネームの女の子にどことなく雰囲気が似ているが、別人だと思う。彼女とは別にもうひとり、ガイドの女性がいて、その人は30歳ぐらいの白人である。亜麻色の長い髪を無造作にポニーテールに結わえ、化粧気は無く、ジーンズにTシャツのラフな服装である。彼女の顔には特徴があって、キツネ顔と言うのだろうか、鼻や頬の筋肉が盛り上がっていて動物的な感じがする。体はかなり痩せ気味。私たちは何か乗り物に乗って移動しているのだが、それは自動車ではなく、かといって普通の電車でもない、強いて言えば遊園地のおもちゃ電車のような乗り物だったと思う。目の前には山と森が広がっている。その瞬間、いきなり、とてつもなく面白い風景が展開した。巨大なネット(ゴルフの打ちっぱなしコースの周囲に張り巡らされているようなネット)が何百メートルにもわたって張り巡らされていて、その網に観覧車のカプセル部分がたくさんひっかかっているのである。こんな奇妙な風景は見たことがない。私は写真を撮りたいと思い、「カメラ! カメラ!」と叫んだ。カッパに似た女性が一生懸命カメラを探してくれるのだが、どうしても見つからない。私の手元には家族の持ち物であるカメラがあるのだが、使い方が全くわからない。レンズ部分を起動できないのだ。やがてようやく自分のカメラが手元に戻って来た時には、残念ながら例の奇妙な光景は見えなくなっていた。私はガッカリしている。しかし私達が乗った乗り物がさらに前へ進むと、森の景色が少し開けて来た。森の切れ目に例の風景が再び見えるかも知れない。私はふたりを促して乗り物から飛び降りた。カッパ似の女性はとても元気に、カメラを持って嬉しそうに走って行った。私はキツネ似のガイドさんに肩車をしてもらって遠くのほうを眺めたが、例の風景は見えない。肩から降りると、ガイドはさも「重かった」と言いたげに溜め息をつき、自分で自分の肩を揉んでいた。あたりには古く堅牢な城壁のような物が見えていた。
【解説】 巨大な網に観覧車のカプセル部分がひっ掛かっていたり、カッパやキツネに似た女性が現われたり、どうにも妙ちきりんな夢だった。「シャッターチャンス時にカメラを使えなかった」というのが、今夜の夢の重要ポイントかも知れない。現実世界でそういうことにならないように、日頃からカメラの準備をしっかりしておこうと思う。



3日●豪華な食事
前後関係はわからないが、気がつくと手元に食事のメニューがあって、私は声に出してそれを読んでいた。そばに何人か友人がいたかも知れない。メニューには食事(フルコース)のメニューが十数品目ほど書かれていたと思うのだが、それらは聞いたこともない名前ばかりで、いかにも高級そうだ。私はふと、(ところで私は今から食事をするのだろうか、それとも既に食事を済ませたのだろうか)と思い、首をかしげている。
【解説】 そういえば今夜の夢の中では食事をした記憶がない。いわゆる「話だけ」というやつである。残念。



4日●追いつめられたコソ泥
2人組の若い男が他人の家に入って行った。外国人だと思うが、顔はよく見えない。彼らはコソ泥で、忍び込んだ先は留守宅らしい。その部屋は広々とした洋間で、天井が低く、窓がないのか全体に薄暗い。地下または半地下かも知れない。ソファーがたくさん置かれているから、きっと大家族が住んでいるのだろう。コソ泥が家に忍び込んだ直後に、屈強そうな男たちが15〜20人ほどドヤドヤと家に入って来た。彼らは、この家の住人とその友人達らしい。見るからにスポーツ系で、今もスポーツをやった帰り道といった風情である。先に来ていたコソ泥は、逃げ場を失って困り果てている。2人は逃げられないと観念したのか、新たにやって来た男たちの仲間を装って、ドサクサに紛れて一緒にソファーに座り、皆と一緒になんとジュースを飲み始めたではないか。しかし誰かがすぐに「なんだよこの男たちは!?」という意味の言葉をポルトガル語で叫んだ。コソ泥たちは飲みかけのジュースをテーブルに戻し、恥ずかしそうにうつむいている。この時、初めてコソ泥たちの顔が見えた。彼らはふたりとも20歳ぐらい。そのうちのひとりは茶色い巻き毛の、とても可愛らしい顔の少年だ。私はその一部始終を黙って近くから見ていたのだが、彼らからは私の姿が見えていないようだった。
【解説】 コソ泥は何を盗みたかったのだろう。そして、このあとどうなってしまうのだろう。結末が気になる。



5日●↓↑↓
何か3文字の言葉があちらこちらに書かれている。1文字目は背が低く、2文字目は背が高く、3文字目は背が低い。1文字目および3文字目は同じ文字だったと思う。「php」と書いてあったのかも知れない。私はその言葉を「↓↑↓」と翻訳した。
【解説】 夢を見ているあいだも意味のわからない夢だったが、こうして文章にして見るといよいよ意味不明な夢だ。「php」は、出版社の「PHP」とは関係がなかったと思う。肝心なのは文字の並びにおける背の高さなのだ、おそらく。しかし、そのことにどのような意味があるのかは皆目わからない。



6日●……
【解説】 今夜はブースケの調子が悪く、夜中に何度も起こされたため、見た夢を忘れてしまった。※朝起きてすぐにブースケを動物病院に連れて行き、投薬してもらって体調は回復しましたので、ブースケのほうは心配ありません。



7日●北海道の形をした鏡
自動車で知らない田舎道を走っている。少し前を、砂埃をあげて軽トラックがノロノロ走っている。その荷台には、北海道の形をした縦横それぞれ2〜3メートルほどの鏡が載せられていた。
【解説】 これまた意味のわからない夢である。現実世界ではここ最近、鏡にまつわる出来事もなかったし、北海道へ行く予定もない。



8日●空海から「あと3冊書きまいで」と言われる
現在書いている小説に関して、「この本を書き終えてしまったら、空海様とお別れしなきゃならない。淋しいなあ」と一人言を言ったところ、いきなり後ろから空海が現われて、とびきり明るい声で「あと3冊書きまいで」と言ってくれた。あっと思った時にはもう目が醒めていた。
【解説】 今夜の夢では、残念ながら空海の顔は見えなかったが、声は鮮明に聞こえた。実に若々しく明るい、10代の空海だった。かなりの吉夢と思われる。ちなみに「書きまいで」は讃岐弁で「書きなさい」の意味。



9日●誤って左手をみじん切りにする
にんじんと間違えて左手を俎板の上に乗せ、包丁でみじん切りに切ってしまった。と言っても、切られた左手からは1滴の血も出ないし、肉も出ないし、痛くもない。見た目は少しもグロではなく、感覚としては本物のにんじんを切っているのと少しも変わらない。だいぶ切ってからハッと気づいたときには、既に指先から手首のあたりまでなくなっていた。そこで目が醒めた。
【解説】 まったく奇妙な夢だった。友達にこの話をしたところ大笑いをされてしまったが、笑うような夢でもないだろう(苦笑)。



10日●トンネル内の大爆発
気がつくと私は自動車(?)でトンネル内を走行していた。それは恐ろしく細長いトンネルで、先のほうが少しカーブしている。ほかに通行車は見えない。トンネルの上部に一か所だけ、小さなライトが5〜6個ほど並んでいる箇所がある。とても綺麗な光だなと思った瞬間、そのあたりを中心に大爆発が起こった。そのあと自分が、地球がどうなったのかはわからないが、爆発は宇宙の始まり(ビッグバン)を意味するものだったらしい。
【解説】 何やらスケールの大きな夢だった。しかし実際に見えたものは細長いトンネルと、5〜6個の小さなライトだけ。ビッグバンそのものは見ていない。残念。



11日●春日大神
目の前に霊験あらたかな神社が見える。どうやらここには春日大神(かすがのおおかみ)という名の神様が祀られているらしい。そこで神主さんと何か一言二言話したと思うのだが、話の内容は思い出せない
【解説】 そういえば6月に取材で奈良へ行った時、春日大社の前を通りかかったが時間の関係で参拝できなかった。そのことと今夜の夢に関係があるのかどうかはわからないが……。



12日●桜大神社
誰かから「桜大神社」の存在を教えられる。そこへ行ってみようと歩き始めたところで目が醒めた。
【解説】 今夜の夢にはもっと長いストーリーがあった気がするのだが、この部分しか思い出せない。この夢は、おそらく昨夜の夢から続いているのではないかと思う(「桜大神社」の存在を教えてくれた人は昨夜の夢に登場した神主さんかも知れない)。しかし起床してからググったところ、「桜大神社」という名称の神社は実在しないようだ。



13日●……
【解説】 今夜は虫歯が痛み、夜中に何度も起きてしまったため夢の内容は全く思い出せない。ちなみに虫歯は翌日すぐに歯科で治療を受けたため、今はもう大丈夫である。


14日●天井からこぼれ落ちる銀色の球
とてつもなく天井が高い、体育館のような建物。天井の一部に亀裂があって、そこからビー玉大の銀色の球が、何万個、いや何十万個、いや何百万個も、一斉にこぼれ落ちてきた。私は(これは銀、それともプラチナ?)と思っている。
【解説】 意味のわからない夢。たくさんの金属らしき球体が落ちて来たにもかかわらず物音一つしなかったのも不思議だ。


15日●ガラスの螺旋形
法螺貝のような形の巨大な建物。内側には滑り台状の物があって、私はそのいちばん高いところに座っている。すべてはガラスで出来ており、外の様子までが手に取るように見える。ところどころに人の姿が見える。気がつくと私は滑り台を滑り始めていた。時速80〜100キロは出ていただろうか。硬質なガラスに頭でも打ちつけたら、いっぺんで命を落としそうだ。しかし私は臆することなく、スロープを滑り落ちながら果敢に“でんぐり返し”などをして遊んでいる。最後にスロープが一気に急になって、私はまるで不思議の国のアリスのように、真下に向かって落ちて行った。
【解説】 今夜の夢では「螺旋形」「滑る」「ガラス」がキーワードだった気がするのだが、それに対して私自身の感情がないと言うか、滑り台を高速で滑りながらも「怖い」とか「面白い」とか「興奮する」といった感情が皆無なのである。淡々とした夢だった。



16日●わけありの2人の男
見知らぬ部屋。室内には数人の日本人がいて、そのうちの2人の男たちは「わけあり」の関係らしい。おそらく彼らは同じ女性を愛しているのではないかと思う。しかし、お互いにそのことを知っているのか知らないのか、2人は少なくとも表面上は紳士的に付き合っている。年上の男が年下の男に「君はこちらの部屋を使ってください」と言い、年下の男は「わかりました」と素直に応じている。私は傍観者で、一部始終を見ながら(不思議な関係だ)と思っている。
【解説】 今夜の夢にはもう少し複雑な物語があったような気がするのだが、この場面しか思い出せない。



17日●丘の上の怪しい研究所
緑が鬱蒼と生い茂った丘陵地帯を歩いて行くと、途中の丘の上に、いかにも場違いなイメージの建物があった。どうやら非常に進んだテクノロジーを扱う怪しい研究所らしい。そこで私は何らかの秘密任務についたのかも知れない。短時間ではあったが、とても重大な何かをしたようだ。しかし研究所を出たあとは、何事もなかったように再び丘陵地帯を歩きだしていた。
【解説】 今夜の夢のなかで、2〜3人の白衣を着た科学者に逢ったような気がするのだが、あるいは気のせいかも知れない。



18日●女子中学校の制服を着る
前後関係は思い出せないが、気がつくと私は女子中学生に戻っていた。と言っても、視界に映っているのは首から下だけ。つまり私は、立ったまま下を見下ろしているのだ。私は夏の制服を着ている。白い半袖のセーラー服で、リボンもスカートも紺色。スカート丈は長すぎず短すぎない膝上3センチ。両手で黒い学生鞄を提げている。しかし不思議なことに、体型が実際の自分ではない。実際の中学時代に比べてふっくらしている(注/デブという意味ではない)。成熟した女性らしいというか、妙に大人っぽいのだ。私は心の中で(あれ? このカラダは私じゃないみたい。顔はどんなに変わったかな)と思っている。
【解説】 中学時代に戻った夢かと思いきや、それは私ではない誰か別人なのだった。体型から推察するに、かなりの美女だったのではないかと思う。また制服の着方や鞄の感じから、進学校に通う育ちのいいお嬢さんが連想された。もう少し夢の時間が続いたら、鏡をのぞいて顔を確かめてみたかった(笑)。ちなみに、私が通っていた中学校に制服はない。



19日●2つ並んだ小判型のブラックホール
最初に何かノスタルジックな感じのする物語があったのだが、その部分は思い出せない。次に気づいたとき、目の前にの空間に2つの穴が見えた。穴は同じ大きさで、小判型、色は黒。ブラックホールのようなものだと思うが、なぜ2つ並んでいるのかはわからない。神秘的な気分。誰かが私に何か宇宙の秘密のようなことを囁いたようだが、その内容も思い出せない。
【解説】 静かで、音がなく、全体に神秘的なイメージの夢だった。最初の部分にもっと具体的なストーリーがあったように思うのだが、思い出せないのが残念である。



20日●砂時計の穴に落ちる
目の前におびただしい量の砂がある。砂はほんのり薄いオレンジ色で、いくつかの点を中心に幾何学的な模様を描きながら音もなくザワザワとうごめいている。その光景は巨大な万華鏡を思わせる。点の下には穴があるようで、すべての砂粒は最後に穴から落ちてゆく。まるで砂粒たちが踊りながら砂時計の穴へと引きずり込まれてゆくような光景なのだ。私はその光景に魅了されてその場に立ち尽くしていたが、暫くすると私までが足もとから砂の中に呑みこまれ、穴の奥へと落ちて行った。
【解説】 今夜の夢の内容をこうして書き出してみると、イメージ的には昨夜の夢に似ていたかも知れない。穴から落ちて行くというと怖い夢を連想されてしまうかも知れないが、イメージ的にはむしろミステリアスで恍惚とした世界だった。



21日●書店とPTA
私は紀伊国屋書店らしき本屋にいた。静かな空間。学術書か専門書のコーナー。何の本だったか思い出せないのだが立ち読みしていると、PTA関係の人が通りかかったので軽く会釈した。短い会話があったのかも知れないが思い出せない。
【解説】 今夜の夢には具体的なストーリーがあったように思う。しかし残念ながらイメージしか思い出せない。なんとなく格調高い、上品な夢だった。立ち読みしていた本が何だったかは思い出せないが、縦書きの本だったと思う。



22日●スーパーで仕事を邪魔される
気がつくと私はスーパーマーケットの通路でパイプチェアに座っていた。目の前の棚にはたくさんの商品が並んでいる。ハッキリと見たわけではないが、並んでいたのは植物性オイルだった気がする。しかしサイズがひどく大きいのでアメリカ製かも知れない。すぐ隣にもう1客パイプチェアが置いてあり、見知らぬ女性が座っていた。昔、カルビーのポテトチップスの宣伝でブレイクした藤谷美和子さんによく似た美女だ。私はお店から頼まれてアンケート用紙に何か書き込んでいるのだが、彼女が私の顔をじっと覗きこんだりして邪魔をするので、気が散って仕方がない。しかも彼女は自前のボールペンを持っているにもかかわらず、「そのペン貸して」と私のペンをねだるのである。私のペンはいつも持ち歩いている私品(極細の油性ペン)だ。私は「1本しかないので(貸せません)」と淡々と答えた。彼女は実にKYな人で、そのあとも私の前を必要以上にうろうろし、仕事の邪魔をする。悪気がないにしてもウザい。しかしどこか可愛いのも事実だ。そのあと商品が並んだ通路へ行き、ラグビーボールのような形をした拳(こぶし)大の黄色い物(何だかわからないが高級品だったように思う)を2つ手に取って、右手と左手でそれぞれの重さを比較観察していた。どうやらこれも私の仕事らしい。その間も、例の彼女は不思議そうな顔で私のまわりをうろついていた。
【解説】 意味のわからない夢。現実世界では「スーパー」「パイプチェア」「植物性オイル」「ペン」「アンケート」「ラグビーボール状の黄色い高級品」のいずれにも思い当たる節は全くない。藤谷美和子さん似の人にも現実には見覚えがない。



23日●礼儀作法の小冊子を持って来る人
ひとりの女性が小冊子を持って訪ねて来た。私より2〜3歳年下の女性だと思う。彼女は読者さんで、以前から何もかも私のマネをしたがるのだ。私は内心(やれやれ、また始まったか)と辟易しているのだが、しかしそれはそれで仕方ないと半分諦めてもいる。小冊子を開いてみると、各ページは3段組みで、どの段にも数枚の写真とその説明文が並んでいた。写真はモノクロで、人物ばかりが写っている。被写体は昭和初期のファッションをまとった数人の男女で、正座をしたり、挨拶をしたり、土産物らしきものを受け渡している。どうやら礼儀作法の本らしい。冊子はA4版で、ページ数はわずか10数ページだった。
【解説】 今夜も意味のわからない夢だった。全体にレトロ感がたっぷり漂う夢なのだが、それは昭和も昭和、明らかに私が生まれる前の昭和なのだ。冊子をパラパラめくっているだけで夢が終わるというパターンも珍しい。



24日●智慧の詰まった紙袋
私の横にとても感じの良い人がいる。おそらく1人ではなく2人。老夫婦ではないかと思う。ところが不思議なことに、その人たちの姿は全く見えない。私は彼らと何かとても為になる話をし、最後に小さな紙袋を受け取った。その中には智慧のようなものが詰まっているという。見た目は普通の紙袋だが、実は純金製なのだそうだ。持ってみると見かけよりずっと重かった。その袋を手に提げて歩いている。今しがた老夫婦と話したことを思い出そうとしたが、もう何も思い出せなかった。
【解説】 純金製と言いながら、見た目にはごくシンプルな紙袋。感じの良い老夫婦は最後まで姿を現さない。「智慧」というものの本質を遠回しに告げているような、どこか意味深長な夢だった。



25日●太鼓橋の上で考える人
気がつくと、少し離れたところに1人の男性がいた。(おやっ。どこかで見たことがある人だ)と思い、一生懸命記憶をたどったところ、どうやら以前にも「夢」で見たことのある人だと気づいた。確かそのときは、もう1人の男と一緒だったように思うのだが……。男は太鼓橋のようなデザインの橋のちょうど真ん中あたりにいて、立ち止まって何か考え事をしているようだった。
【解説】 今夜の夢に登場した人は、今月16日の夢(わけありの2人の男)のうちの年下の男性ではないかと思う。現実世界では知らない人が2度も夢に現われるとは実に面妖だ。この人は果たして夢の中だけの存在なのか。それともどこかに実在するのだろうか。



26日●お高く止まった女性作家
気がつくと大きな建物の中にある待合室で椅子に座っていた。ここは名門幼稚園らしい。隣の席に大御所の女性作家(日本人)が座っていた。どうやら私には幼稚園児の子どもがいて、隣りの女性作家にも同じぐらいの年格好の子どもがいるようだ。私は大御所の女性作家に対してタメ口で、「前にも逢ったよね」と言葉をかけた。すると彼女はツンと澄ました表情のまま、「左様でございましたかしら。何も覚えておりませんけれども」と慇懃無礼に答えた。私は心の中で(あれ? 伝え聞くところによれば、この人はもっとくだけたキャラのはず。一体どうしたのかしら)と怪訝に思う。そのあと、彼女の子どもがどうやら養護学級にいるらしいことが判明した。私は(それにしても彼女はなぜこんなにお高く止まっているのだろう)と思っている。
【解説】 かなり唐突なイメージの夢だった。私はこの女性と(パーティーですれ違ったことぐらいはあるかも知れないが)いわゆる面識はない。ゆえに、彼女がどんな人なのかも全く知らない。幼稚園児がいるような年齢でないことは確かだが。



27日●特別な卵子を持った女性を探す首相´
前後関係がよくわからないのだが、人類世界の何パーセントかを牛耳っている初老の男性が見える。彼は理由あって地下世界に住んでいる。側近たちも一緒だ。男は小泉元首相にどこか似た顔立ちなので、ここでは仮に「首相´」(しゅしょうダッシュ)と呼ぶことにする。首相´はモニターを通じてひとりの女性を探している。その女性は、特別な子どもを産むための特別な卵子を持っているらしい。しかし彼女の居場所はおろか、顔も名前もわからないため、首相´と側近たちは何年にもわたって彼女を探し続けてきたのだ。そして今、モニターを通じてひとりの女性が見つかった。少し淋しそうにうつむいて地上を歩く20歳前後の美女。この女性こそ、首相´らが探し続けてきた“特別な卵子を持った女性”だ。彼女は友人のK子によく似ているので、ここでは仮に「K」と名づける。Kを発見した喜びで、地下にいる首相´と側近たちは、静かな、しかし深い喜びに満たされている。すぐにKが説得され、黒塗りの自動車に乗せられた。この車は外部からのいかなる力の影響も受けない屈強な造りで、酸素その他の当面必要なものはすべて自給できる。Kはこの自動車で地下世界へと連行されるらしいのだ。Kが車に乗り込むや、大地震でも起こったように地表面が激しく割れ、地球上の人類は壊滅したようだ。ここで目が醒めた
【解説】 「人類の終わり」と「救世主」を思わせる、どこか神秘的な夢だった。そういえば、この夢に登場した女性によく似たK子。彼女は高校時代の友人で、とても綺麗な女性だった。今はどうしているのだろう。とても懐かしい。



28日●若き日の父
土手のような道。向こうから歩いてくるのは若き日の父だ。今日は休日なのだからラフなシャツでも着れば良いのに、役所へ務めに出るような白ワイシャツにネクタイを締めている。父は4歳ぐらいの小さな女の子の手を引いて、いかにも嬉しそうに微笑んでいる。その女の子は私だ。トラディショナルなデザインの花の付いた帽子をかぶり、赤いプリーツスカートを履いている。今は日曜日のお昼前で、私たちはこれから2人きりで外食をとるのだ。おそらく蕎麦屋へ行くのだと思う。母は弟と一緒に家でゆっくりしているのだろう。不思議なことに、父と4歳の私が向こうから歩いてくるのを、こちらで見ているもうひとりの私がいる。こちらの私は現在の私で、父がもう亡くなってしまったことや、長い時間が過ぎたこと、時間は元に戻らないことなどを全部知っている。こちらの私は、向こうから歩いて来る父よりも年上なのだ。そんなことを思い巡らしていると目が醒めた。
【解説】 音のない映画を見ているようなノスタルジックな夢だった。父が亡くなって6年が経つが、最近は以前よりも父のことをよく思い出す。今夜の夢に登場した父は現在の私よりも遥かに若いのだと思うと、不思議な心持ちがした。



29日●瞬間移動未遂
私は、ある場所から別の場所へ瞬間移動できる能力を身につけたらしい。ただし瞬間移動できるのは「信州の山小屋」から「ぽんぽこの湯」(中野市にある温泉の名前)までのルートに限られており、また、この能力が身に備わったことは絶対に他者に教えてはいけない決まりだ。今は夜の11時過ぎらしい。私は急に温泉に入りたくなって、ぽんぽこ温泉への瞬間移動を試みようとした。しかし、この時間帯では温泉が閉館してしまっていることに気づき、私は温泉へ行くことを諦めた。
【解説】 「瞬間移動」とか「どこでもドア」とか「タイムマシン」は憧れのアイテムだ。常識に逆らって時空を超えてゆく、その状態を想像しただけでも快感だ。現実にはそれができないから、私は小説を書く。いま書きおろしている空海小説は、まさにそんな感じだ。小説を書いている時、私は1,200年の時を超えて空海に逢っているのだ。しかし今夜の夢は瞬間移動しようとして失敗する、いわば「瞬間移動未遂」の夢である。そのため達成感がない。早いところ本物の温泉に行きたい(苦笑)。



30日●ガラスが割れる
見知らぬ広い和室。部屋の右奥の隅に、古風な感じの和箪笥が置かれている。そこに大きな鏡が取り付けられているのだが、何かの拍子に箪笥が倒れ(あるいは倒れかかり)、鏡が割れてしまう(あるいは割れそうになる)。それを見た私は、数人の人たちと一緒に急いで走って行って、箪笥を助け起こそうとする。
【解説】 今夜の夢にはもう少し複雑なストーリーがあった気がする。しかし、思い出せるのはこの部分のみ。昨夜は就寝前に本を読んだのだが、その中に鏡が割れるシーンがあったのだ。それがすぐに夢に反映されたようである。



31日●……
【解説】 誰かが家に遊びに来る夢を見たような気もするのだが、今夜は夢の詳細を忘れてしまった。





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